鬼灯 physalis ～ 空猫と画家 編 ～

6 雨と香り （前）

しばらく静かに食事していたら突然、店内の電気が消えて。

驚いて周りに目をやれば。
聞き慣れたメロディーと共に店の奥から沢山のロウソクに彩られた特大のショートケーキが現れた。

僕らより先に来ていた家族連れの、小学生くらいだろうか？ 男の子の誕生日のようで。
オーナーが同席していた客達にハッピーバースデーの歌を促し。
店内はどこまでも幸せそうな空気に包まれていく。

僕もその微笑ましい光景に見とれていて……ニヤがその時どんな表情でそれを見ていたのかまったく気がつかなかった。