6 雨と香り (前)

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「誕生日って祝うもんなんだ」 家に帰る途中、ニヤがポツリと呟いた言葉に。 僕は今日あの店に連れていったことを死ぬほどに後悔した。 慌ててニヤの誕生日を聞いて僕は愕然とした、その日はニヤが僕の家に来た日。 それはつまり、ニヤの母親がニヤを捨てた日だった。 寂しそうでもなく辛そうでもない表情のニヤが僕にはとても悲しく思えた。 彼女にとって、誕生日を祝うということは多少の驚きではあれ、自分自身とは完全に切り離されたものなのだ。 ……だから、今年のニヤの誕生日は満面の笑みを浮かべたニヤが見たかった。 それが無理でも楽しい誕生日を過ごさせてあげたい。 そう思った。
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