6 雨と香り (前)

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長閑な昼過ぎの喫茶店でぼんやり考えていると。 「お客様、コーヒーのお代わりはいかがですか?」 突然、声をかけられて「いや、結構です」答えながら声のした方を見れば、悪戯が成功して嬉しそうな矢野さんが立っていた。 「矢野さん……」 「ごめんね、お待たせしました」 申し訳なさそうに謝る彼女に「そんなに待ってないよ」と、ありきたりな答えを返してから「お茶は?」 尋ねる。 「ううん、いらない。 それより早く行こ、可愛い従姉妹ちゃんに素敵なプレゼントを見つけないと!」 張り切る彼女に、僕は胸が少し痛む。
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