6 雨と香り (前)

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そこには見覚えのある校章とともに「第59期生 卒業記念」の文字がある。 「卒業アルバム」 思わず呟いて矢野さんを見れば、ニッコリほほえんで彼女が頷く。 高校を退学した僕は当然卒業アルバムなど持っているはずもなく、その存在すら忘れていた。 「見て良い?」 「勿論」 分厚い表紙を捲り、ページを進めるたびに懐かしい顔が現れる。 そこには僕が参加出来なかった卒業フェスティバルの写真も挟まれていて。 僕は級友の姿に顔を綻ばせながら、なんとも言えない寂しさのようなものを感じていた。 「寂しかった」 矢野さんが呟くようにいって、自分にたいして聞いているのかと思い顔を上げるとかなり近い位置に、彼女の顔があって、茶色がかった瞳がまっすぐと僕を捉えていた。
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