7 雨と香り (後)

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ニヤは僕が来ると思っていなかったのだろう、膝を抱えたまま僕を見上げ驚いていた。 「帰るよ」 腕をつかんで、立ち上がられせれば、ニヤはこれ以上ないほど僕のことを睨んで。 「離せよ!」 言いながら僕の腕を振りほどく、ニヤの思い通りに手を離した僕は気がついた時には思いきりニヤの頬を打っていた。 大きく見開かれた目に「帰るよ」かすれた声でもう一度促せば、噛みつくように僕をみて。 「ほかの女の匂いさせて、ニヤに近づくな!」 叫ぶように言ってニヤは再び雨の中を走り出す。 ニヤに向けて伸ばした手は確かに彼女を掴んだはずなのに全くというほど力が入らなくて……。 目の前が歪んで、走り去ろうとしたニヤの小さな叫び声と共に僕の体は雨のアスファルトの上へと崩れていった。
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