7 雨と香り (後)

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僕はそんなニヤを見るとき酷く羨ましく思う。 ニヤだけではない、僕に想う人がいると知りながら自分の気持ちを伝えた矢野さんや、僕の身勝手な両親にも一歩も退かなかった森川さん……。 彼女らに比べると僕はどこまでも情けなく優柔不断で。 彼女らに勝っているものがあるとすれば描くことだけなのに、それにすら真剣に向き合えない自分。 なんて臆病で愚かなんだろうと、心から思う。 「ごめんね、痛かったろ?」 ニヤの頬を撫でながら尋ねた僕の声は驚く程に掠れていた。
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