8 その猫の居場所

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8 その猫の居場所

珍しく遅く帰ってきた彼から良い香りがした。 何時もの絵の具の香りとは違う花みたいな香り。 画廊のあの人とは違う香り。 何時もより穏やかな表情に彼が「大切な人」にあって来たのだと思った。 嫉妬するよりも、ただ怖かった。 夕食を外で食べて帰ると彼が言っていた日。 たまたま見かけた、見慣れた車には知らない女の人が乗っていて……。 とても綺麗で可愛らしい人だった。 そして、その人は自分とは違って大人の女の人で。 見たこともないほど楽しそうに笑う彼の姿に涙がこぼれた。 「お願いだから、ニヤから玲をとらないで」 心の中で何度もそう叫んだ。
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