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「戻れ!みんな戻るぞ!!」
男はそう言いながら、さっきまでいた部屋に戻ろうとドアノブに手をかけた。
しかしいくら開けようとしてもドアは開かない。
どうやら戻る選択肢はないようだった。
恭子は床に倒れている浩太をずっと見ていた。
これって私のせい?
さっきまで、これで帰れるねって二人で話していたのに…
印象的だった整った顔は今はそこにはない。
顔を貫いた矢を見つめてしまう…
矢…??
一体どこから…
恭子は壁を見渡す…
よく見ると壁には無数の小さい穴…
どうやら、壁全体に矢が仕込んであるようだ。
「いてぇ!!」
男の腕に矢が刺ささるのを見て、一同は
ここはやばいと一斉に感じとった。
恭子も同じだった。
浩太のことを胸の奥にしまい、一気に階段を駆け抜ける。
それに続くようにして、他の八人のメンバーが階段を駆け登りだした。
駆け登る恭子の後で、叫び声や鈍い音等がしたが、決して振り返らず、
ただ駆け登った。
まるで終わりのない階段を登るような感覚。
振り返れば登りきれないだろう…
視界の先にドアがある。
神様お願い!
恭子は普段、神にお願いなどしないくせ、今だけは必死に神に祈った。
バン
恭子の神への祈りが終わるころ、恭子はドアを押し開けてドアの向こうの部屋にダイブしていた。
サンキュー神様
「すごいダイブだね」
恭子のすぐ後には、深く息をつきながら女の子が立っていた。
どうやら彼女も階段を登り切ったようだった。
あれ?この子…最初部屋で泣いてた子だ…
恭子は驚いていた。
細身で、地味な印象の子…
眼鏡をかけているせいか、優等生といった感じを思わせる…
よくたどり着いたものだ。
「はぁはぁ、大丈夫?」
「はい…」
「よく登れたね?私は体力には自信あったからなんとかだけどさ…」
「こぅ見えて私、陸上部なんで」
なるほど…どうりでね。
心の中で納得。
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