93人が本棚に入れています
本棚に追加
みんなそろそろ酔いが回ってくる。
「はいはい、皆さん次のお料理持って来ましたよ!」
元気な声がして、中年の女性と、若い娘が、盛りのいい大皿を運んできた。
この店の女将、松岡タマコと、娘のフウカだ。
オーッ!毎度ここは盛りがいーねぇー!パチパチ…いよっオカミさんふとっぱら!
口々に称讃の声。
「みんな、お腹一杯にしてっとくれよ!毎度ご贔屓にありがとさんねぇ!」
あいしてるよぉ~オカミさん…ワハハハ~
どうやら、この女将は皆の母親的存在の様だ。
フウカちゃん、彼氏できたかぁ~ダハハハァ~
冷やかしの声に、娘のフウカが笑って応えた。
「バカな事言ってないの!ジャンジャン飲んで食べてってね!」
どうやら、娘の気性は母親譲りらしい。
はいよ~あんがとさん、今度デートしてくれぇ~ワハハハ~
大皿を置いた女将と娘は、座敷を出て行った。
「はい!スマイソンさん、ナマ中おかわりどうぞ」
婦警の島田タカコが、潤んだ目でスマイソンにジョッキを手渡した。
「ああ、島田さんどうもありがとう!」
「島田さん、オレの分は?」
近藤が尋ねる。
島田は近藤を、キッ!っとニラミつけた。
「そんなの自分で取ってきたらいいじゃないですか!甘えないで下さい!…そんなことより近藤さん、ちょっとどいて下さい!」
近藤が怯み、少し引いたスキに、島田は割り込んで座る。
「…なっ、なんだよぉ~…少しくらい優しくしてくれても…」
「おだまり!」
「…はい…すいません…」
謝ったものの、近藤は不満顔で何事かブツブツボヤいている。畳に「の」の字を指で書き出した。
完全にイジケた様だ。
「…ねぇ、スマイソンさん、…いえ、マモルさん…次の非番は何か予定でも入ってますぅ?」
ネコ撫で声の甘えた声で、尋ねた。
島田は既に、かなり酔っているようだ。
スマイソンは島田に目を合わさず、顔を強張らせた。
「…いや、ジムに行く他は特にこれと言って、あるような…ないような…」
シドロモドロだ。
最初のコメントを投稿しよう!