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元太の手にはあのリップがまたも握られていた。
そして7日前のように再び口にした。
「……う、うまい…。」
ついに脳は味覚までおかしくさせた。
あのリップをムシャムシャ食べ始めたのだ。
全てを食べ終わった元太はまるで満足したような痩けた顔をして、再び眠りに入った。
そして元太は夢を見た。
早苗と悠太と自分の3人で再びピクニックに行く夢。
幸せそうな3人。
3人で広大な草原でかけっこをしている。
あなた~早くきて!!早苗が叫ぶ。しかしどんどん早苗と悠太は向こう側に走って行ってしまう。
「おい、待てよ~!!」
「…お~い!!」
ほどよい春風が吹いて
元太は独房の中で目を覚ました。
ショックだった。
辛い夢だ。決して現実からは逃げられない。
だけどにあの時の決意がまた明確に思えてきた。
久々に意識がはっきりとした。
それは夢のお陰か、栄養もなんもないリップで食を多少満たしたからかは誰も知らない…。
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