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段々近づいてくるにつれ、あたしの心臓の鼓動は速くなった。 薄っすらと車内に浮かぶ彼の影が見え、スモークがなければちゃんと見えるのにと思わずにはいられなかった。 だが、ちょうどすれ違う寸前の所で突然、シーマの運転席の窓がゆっくりと開いた。 え……………? そこには雑誌で見た通りの彼がこちらを見て微笑んでいたのだ。 あたしは瞬く間の出来事に放心した。 そして、暫くして全身がカーッと熱くなるのを感じた。 たった数秒だけれど、彼と目が合ったのだ。 やはり生で見た彼の方が何倍も格好良く見えた。 彼が通り過ぎた後もまるで映画のワンシーンのようにさっきの出来事が何度もあたしの頭の中で思い起こされる。 あたしの瞳がカメラのレンズに見えたのだろうかと思う程、彼はしっかりとあたしと視線を合わせて完璧過ぎるほどの微笑を浮かべていたのだ。 あたしは夢うつつの中、我を忘れてすっかりのぼせ切っていた。 こないだこちらを見ていたのは気のせいではなかったのだ。 でも何故だろう…? 知り合いでもないのにと不思議に思ったが、すぐにあたしはどんな顔して見ていたのだろうと思った。 おそらく、今まで熱い視線を送っていたに違いないと思い、途端に恥ずかしい気持ちが押し寄せた。 だが、それからすれ違う事もなく、あたしの気持ちは現実に引き戻された。
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