伝説のあいつら。

2/4
前へ
/9ページ
次へ
藤本真は、熱心にテレビを見ていた。 音楽番組で、今日はバンド特集が組まれている。 その中に、真が注目しているバンドがいる。 その名も『M』である。 バンドブームの火付け役と言っても過言ではない。 インディーズの中でも圧倒的な人気を誇り、ついこの間自主制作で、デビューシングルを出したばかりだった。 そのシングルも2ヶ月を超えるロングセラーとなっている。 歴代の記録を塗り替える、オリコンチャート一位を記録したまま、なのである。 インディーズでは異例の出来事だった。 しかし、彼ら『M』はテレビに出るようなことはなかった。 シングルのプロモーションはCGやモデルで作ってあり、本人たちはライブでしか顔を見せなかった。 しかし、そのライブでも照明が暗い中でやっているため、素顔が見えたという人はあまりいないという。 前のバンドの演奏が終わり、『M』が紹介されている。 どうやらどこかのライブ会場からの中継らしい。 彼らの顔は、薄暗い照明であまり見えなかった。 紹介が終わり、一瞬静かになる。 息をのんで演奏が始まるのをテレビの前で待っていた。 カメラはバンドメンバーがフレームにはいるように、全体を映し出していた。 暗い影が彼らの姿だ。 真ん中の人が『M』のボーカルのリュウである。 その真ん中の影が、ゆっくりとスローモーションのように倒れていった…。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加