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藤本真は、熱心にテレビを見ていた。
音楽番組で、今日はバンド特集が組まれている。
その中に、真が注目しているバンドがいる。
その名も『M』である。
バンドブームの火付け役と言っても過言ではない。
インディーズの中でも圧倒的な人気を誇り、ついこの間自主制作で、デビューシングルを出したばかりだった。
そのシングルも2ヶ月を超えるロングセラーとなっている。
歴代の記録を塗り替える、オリコンチャート一位を記録したまま、なのである。
インディーズでは異例の出来事だった。
しかし、彼ら『M』はテレビに出るようなことはなかった。
シングルのプロモーションはCGやモデルで作ってあり、本人たちはライブでしか顔を見せなかった。
しかし、そのライブでも照明が暗い中でやっているため、素顔が見えたという人はあまりいないという。
前のバンドの演奏が終わり、『M』が紹介されている。
どうやらどこかのライブ会場からの中継らしい。
彼らの顔は、薄暗い照明であまり見えなかった。
紹介が終わり、一瞬静かになる。
息をのんで演奏が始まるのをテレビの前で待っていた。
カメラはバンドメンバーがフレームにはいるように、全体を映し出していた。
暗い影が彼らの姿だ。
真ん中の人が『M』のボーカルのリュウである。
その真ん中の影が、ゆっくりとスローモーションのように倒れていった…。
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