自分。

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喫茶店の中で帽子を目深にかぶり、見た目からしてとても怪しい男がいる。 その名も高崎璃音である。 出すCDすべてチャートにランクインする超人気メジャーバンド、ルシフォードのキーボードである。 なぜこの男がここにいるのか。 久々のオフ日なので、幼なじみの上条さつきと遊ぶ予定をしていたのである。 そのさつきを待っているのだが、なかなか現れない。 少しイライラしながらコーヒーを口元に持っていく。 「ごめん!待った?なんかやたらと道が混んでて…!」 「…遅い」 不機嫌を装い、さつきを睨んだ。 「ごめんってば…。そんなに怒らないでって、ね?」 落ち着き払って席に着く。 ウェイトレスが注文を聞きに来て、さつきはアイスコーヒーを頼んだ。 「でー…、なんでそんな暑苦しい格好なの?そんなにバレるかなぁ?」 「あんまり顔は見られていないとは思うけど…、念のためだ。もしバレたら明日のワイドショーのトップを飾ることになるぜ…」 「いいんじゃない?『ルシフォードのキーボード、リオン!幼なじみの女性と交際発覚!』なんてね」 楽しそうにさつきは笑う。 「それってワイドショーよりは東スポ一面だな」 二人は喫茶店で落ち着いた後、とあるライブハウスに来ていた。 璃音の古くからの友人が今日、ここのライブハウスで演奏するということを聞いていた。 ずひ見てみたいと思い、さつきとデートしつつ来てみたのであった。 三国城太郎は、いつも以上に緊張していた。 なぜならボーカルを失ってから久々のライブを行うからである。 「緊張するな…、リュウがいなくなってから初めてだぜ」 「平気だろ。ただ…、カイカの話してたヤツがくるかどうかだけだし」 気丈を装いながらも不安を隠せないでいるのは、このバンド『M』のギター、新井透吾である。 奥の方にはこのバンドの創始者、カイカが腕を組んで座っている。 「何も恐れることはない。今日のライブはあいつがくるかどうかにかかっているんだ」 カイカがそういうと、二人は落ち着いたようでにこっと笑い、談笑し始めた。 二人が談笑する姿を見て、カイカは色々と考え始めていた。 ボーカルの他に、もう一人メンバーを増やそうと。
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