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全ての授業が終わり、真はある場所に向かっていた。
そう、『M』と出会ったライブハウスに向かっていたのだ。
自然と足がそっちの方向へ歩きだしてしまう。
特に今日みたいにひどく落ち込んでしまった日は。
いつも毎日のように通っている場所である。
目的地についてびっくりしたことがあった。
平日だというのに入りきらないほどの人が立っていた。
いつもだったらもっとガランとしていて、マスターも暇そうにあくびをするくらいだったのに。
けれど、今日のマスターはあくびをすりどころか汗までかいている。
「活動休止してた『M』が復活するんだって!?」
「うん!ボーカルがいなくなってから初めてだよね…。見つかったのかな?」
「そんなニュースとかやってなかったけど…」
真は胸がドキドキして顔が熱くなった。
『M』が…。
『M』がここで見れる!?
平日のライブハウスにこんなに人が入っていたのは、事前に口コミで『M』が出るていうことを流していたらしい。
男も女も入り混じっていた。
ハウス内が暗くなる。
いつも『M』のライブは周りが見えなくなるくらい暗いのが主体だ。
スポットライトが三人に当てられる。
その光も弱々しく頭上から降り注ぐ。
「今日は俺達、『M』のためにきてくれてありがとう。先日、リュウが麻薬中毒で亡くなり、『M』というバンドはほとんど解散に近い状態だった」
会場全ての人がバンドリーダー、カイカの話を聞いていた。
時折、女の子が泣いているようですすり泣きが聞こえてくる。
「解散することは簡単だ。けれど、ここで解散してしまったら、ここまで付いて来てくれたみんなに申し訳ないと思ったんだ。だから、『M』は…、いや、俺達は前に進みたいと思う。リュウが死んでま悲しみを乗り越えられない人がいるかもしれない。だから、リュウが死んだ分まで、俺達はみんなに歌を与え続けたい…。今日ここに来たのは、俺達が最初にライブしたのがここだったんだ。前進の意味も込めて、新しくなった俺達を見ていてほしいと思う。まだボーカルはいないから歌を聞かせることはできないけれど、新しいジャンルにチャレンジした。ニューバージョン、トランスミックス聞いてください」
カイカがマイクを離すと、一気に盛り上がった。
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