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景気良く排気ガスを吐きながら、数多の車が走り抜ける。
遠くからは鐘の音が聞こえる。教会の鐘だろう。
喧騒はしかし耳障りではなく、一つの風景となっている。
裏路地に入ればガラの悪い浮浪者が気だるそうに迎えてくれる。
さらに奥へ入れば人影は薄れ、廃工場の入り口が情けなく口を開けている。
これから中で派手な祭りをやるっていうのに陰気だな。
廃工場から男が何人か出てくる。早とちりには安物の鉛をプレゼントして夢の世界へご招待。
中を覗けばもう祭りの準備も心構えも万全のようだ。頼もしい。
祭りの指揮を執る者は堂々と、そして仰々しくなければいけない。
両手を大きく広げて登場し始まりを宣言すれば、後は皆好き放題。
閃光、轟音、派手なオープニング。
踊れ踊れ。日は高くても関係無い。酒をぶち撒け、手足を飛ばしてマジックショー。
肉を持ち上げ皆で蜂の巣作り。美しき共同作業。出来た蜂の巣はご褒美にあげようか。
祭りも後半。皆も気力を振り絞って叫ぶ叫ぶ。だけどいまいち盛り上がらない。
それじゃあ最後は思い切って花火を揚げてみよう。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。とっておきは二発同時だ。
祭りは盛大な花火で幕を閉じた。ゴミが散乱しているが、片付けは別の人の仕事。
祭りの会場を後にして、表通りへ。
ここは夢の街(フェアリーランド)
『サレーネカステッロ』
我らが「荘厳なる城」へようこそ。
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