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まったく冗談ではない。
殺しを主な仕事にしている男のところに、まだ十を過ぎたばかりぐらいの子供を預けるだと?しかも仕事でなく?
「なんで俺が引き取らなきゃならない!」
「まぁそうカッカするな」
「無茶言うな!」
「あの…」
俺が牙を剥き出しにしてグラッソに吠えていると、グラッソの少し後ろから小さな声が聞こえた。
「わたしはどうしたら…」
「ああ、心配しなくていい。すぐにこの犬っころを静かにさせるから、ちょっと待っててくれ」
「誰が犬っころだ!」
ガルルルと唸る。反射的にノッてしまう辺り、もう救いようがない。
「落ち着け。その封筒の中身を確認してみろ」
「封筒?」
「いいから」
まともな説明も受けないまま、とりあえず封筒の中身を確認する。
中に入っているのは札束と…紙?
「なんだコレ」
「読んでみろ」
促されるまま、丁寧に折り畳まれた紙に目を通す。
「…………!!」
俺は我が目を疑った。
だが何度読み返してみても、そこに書いてあることは変わらない。
「おい、グラッソ──」
紙から視線を戻すと、そこにはすでにヒゲ天使の姿はなく、ヴェルデだけがこちらを見ていた。
「あンのやろっ…どこ行きやがった!」
困惑した頭でドアへと走り出す。
直後、窓の外からクラクションの音が聞こえた。
「!?」
急いでUターンし、窓の外へ身を乗り出す。
そこにはすでに車の中に入っているグラッソが、腹の立つ笑顔で手を振っていた。
「それじゃあ、その子のこと頼んだぞっ。くれぐれも襲ったりなんかするなよっ?」
「ッザケんナ、このヒゲ親父ィ!!」
グラッソはそのまま笑い飛ばすと、軽快に車を走らせていった。
俺はその背中が見えなくなるまで睨みつけた後、少女へと振り返った。
「…あー…えと」
「…」
子供の相手なんてしたことが無いから、どうすればいいのかさっぱり分からない。
それに加えて、頭の中はさっきの紙のおかげでゴチャゴチャだ。
「…えーと、まぁ、そういうわけで俺と一緒に暮らすことになった。その…よろしく、な」
「よろしくお願いします。それで…」
「うん?」
ヴェルデはおずおずと言葉を口にした。
「パドローネ(ご主人様)…あなたの名前を聞いてもいいですか?」
「あー…」
自己紹介が遅れた。
俺は『ディアボロ=アルビトロ』。
主に人殺しを生業としている殺戮兵器だ。
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