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* * * * * * * * * * * * * 「……」 「……」  沈黙。  実際ここにいてもやることは無いのだ。仕事を請ける気もしないのだから、さっさと部屋に帰って寝るのが俺のいつもの日常だ。  だが。 「……」 「……」  部屋に帰って俺は寝るとして、それじゃあこの子はどうすればいい?  放っとくといっても俺をずっと見ているのだから、逆に気になって仕方ない。「見るな」と命令するのも嫌だ。  ならば、一緒に寝るか?そんな馬鹿な。俺にそんな趣味は無い。  だったら明るく話でもしてみるか?無理だ。子供を相手にしたことがない俺にそんなことは出来ない。何より…面倒だ。 「……」 「…あの」 「!?」  仏頂面で机に突っ伏していた俺に突然声が掛けられた。 「ど、どうした」 「これ…」 「ん?」  ヴェルデが差し出してきたのは、装飾が全く無い銀色の指輪だった。 「これって…」 「パドローネの証です。絶対に無くさないようにパドローネが持っていてください」 「あ、ああ…」  パドローネの証。  封筒に入っていた紙に何が書かれていたのか話しておこう。  彼女、ヴェルデはある廃墟の地下室で見つかった。彼女が安置されていた部屋は地上の廃墟っぷりと比べて、奇跡が起きたと言えるほど綺麗な状態だったそうだ。  彼女が寝かせられているベッドの傍らには、一枚のメモと一つの指輪が置かれていた。  そのメモには、彼女を創った喜びと後悔が書かれていた。  彼女を創る際に必要となった材料の中に、何か「危険なもの」を動かす「鍵」があったらしい。その「鍵」を狙ってとある組織が動いている。しかし自分は力無き錬金術師、我が娘を守ることは出来ないだろう、と。  メモの最後にはヴェルデを創った錬金術師から── 「心ある人よ。どうか我が娘、ヴェルデを頼む。あの天使を語る悪魔から守って欲しい」  そう無責任な願いが震えた字で書かれていたそうだ。  彼女を見つけたのはグラッソ本人。  そのメモを読んだアイツは「ヴェルデを守れるのはディアボロ(俺)以外にいない」と思い、指輪をこっそり拝借。様々な書物を読み漁って、とうとう契約の仕方を見付けて俺を契約させたんだそうな。  ……むちゃくちゃだな。次会ったら絶対ぶん殴ろう。  とりあえず、指輪を右手の中指にはめる。 「……」 「……」  また沈黙。  仕方ない、帰るか…。
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