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俺だったら確実にキレてる状況だ。特にグラッソ辺りをボコボコにしてるだろう。
「…俺は、ある意味自由業をやってる」
「…じゆうぎょう?」
そんな境遇でも、あるがままに受け入れて挫けないように頑張ってるんだ。
俺に出来ることなら何でも協力してやらなきゃな。でなきゃあまりにも悲劇…いや、喜劇が過ぎる。
「まぁ、一つに特定出来ない仕事ってことだ。色々やってる」
「そうなんだ…それって、わたしにも出来ることはある?」
「んー…まぁ、無いことはないな。来る仕事によって変わってくる」
「仕事はグラッソさんが持ってくるの?」
「それもあるし、別のもある」
「別?」
グラッソが持ってくる仕事についてはまだ話さなくてもいいだろう。
…『天使を語る悪魔』というのが少し気になるが今はまだいい。
「ヴェルデが出来そうなのはグラッソとは別のほうだ」
「そっか…まだ、質問してもいい?」
「ああ」
「これが一番聞きたかったことなんだけど…」
少しうつむいてから、また俺の顔を見上げるヴェルデ。真剣な顔つきになっている。
「ディアボロは…人間、じゃないよね?」
「──」
思考が停止する。
今日会ったばかりの少女に、まさかこんな質問をされるとは思わなかった。
「…何故、そう思う?」
「わたし、ディアボロと契約してるから何となく分かるの。ディアボロが持ってる魔力の量があり得ないほどのものだって…」
「…」
考えてみれば、当然か。
錬金術で創られたモノは一般的な物でない限り、大抵魔力が原動力となる。そしてその魔力をほとんどのモノは外部からの供給に頼っている。
だが俺は違う。
「…俺もお前と同じ。錬金術で創られた人形だ」
俺は「賢者の石」を使って創られた。それ故に無限の魔力を内蔵している。
だから俺には契約者が必要無い。
…そのせいで俺の力は良いように利用された。
「黙ってて悪かったな。このことはまだグラッソにもはっきりとは言ってないんだ」
「じゃあわたしが一番ってこと?」
「俺の口から伝えたのはな」
「そっか」
ヴェルデはすごく嬉しそうに笑った。
「どうした?」
「ふふ…なんだかね」
何故だか分からないが。
「すっごく幸せ」
「──」
その笑顔を失くしたくないと思った。
だが、それは俺だけの秘密にしておこう。こんなこと恥ずかしくて誰にも言えん。
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