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「大丈夫、明るいところには“あいつら”はいないよ。いつもみたいに、気持ち悪くならないし」
「本当に? 変なモノ見えてない? 朔ちゃん……」
まだ不安げな咲の手をぎゅっと握り返して、朔は扉の陰に目を泳がせる。
朔が“あいつら”と呼ぶモノ。それは、常人の目には写らない。
それが属に言う『幽霊』なのではないかと、朔が気付いたのは、ごく最近の事だ。
他人には見えないモノを見る能力が朔に芽生えたのは、約一年前だった。
小学校に上がって間もなく、咲と朔は揃って原因不明の高熱を出した。
丸二日の間、高熱は下がる事が無く……二人は脱水症状にかかり入院を余儀なくされる。
まずは水分補給の点滴をして経過を観察し、血液検査や尿検査の結果が出たところで薬を決めて投薬を開始する予定になっていた。
だが……咲のほうは白血球の数が異常に増えていて、細菌感染症だと診断がついたのだが、朔に関しては検査結果のどこにも異常がないため、これといった薬を決める事が出来ない。
医者は咲には抗生物質の投薬を開始したが、朔には水枕で頭を冷やす等の昔ながらの対処療法を施すしか、手がなかった。
咲の容態はすぐに安定して熱も下がり始める。だが、朔は依然高熱が下がらず、入院2日目にして……痙攣を起こすに至ってしまった。
それが能力が発現する、きっかけだったのかもしれない。
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