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千秋が車に乗り込んだ頃、屋敷と呼ぶに相応しい広さの別荘の中を、咲と朔は手を繋いで探索していた。
二階の板張りの廊下は、少しだけキシキシと音を上げる。それが何故だか面白く感じるのは、二人がまだ7歳だからだろうか。
よく音がする部分を探るかのように、廊下の床をくまなく歩き回る二人は、突き当たりの部屋の扉の中へと、何かの影が消えるのを見た。
「咲ちゃん」
「うん、朔ちゃん」
顔を見合わせた二人は、繋いだ手をお互いにギュッと握り合う。そして忍び足で静かに歩むと、半開きになった突き当たりの部屋の扉の前に立つ。
「…………バアッ!」
お揃いの声を最大音量で重ねて発しながら、二人は勢いよく扉を開く。
部屋の中は二人が想像していたお化け屋敷のような真っ暗な一室ではなく、窓からはさんさんと真夏の太陽光が降り注いでいて、眩しいくらいに明るかった。
「……なあんだ、つまんない」
「ね。お化けかと思ったのに」
つまらないと言いながらも、安堵の表情を見せた朔に、咲も同じ表情でいながら同意した。
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