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「もしかして猫がいるのかも。“わたしにも見えた”んだから、お化けじゃないよね!」
明るい場所には怖いモノはいない。そう思っている咲はすたすたと部屋の中へと入り込んでいく。
「にゃんこー、出ておいでー」
家具の陰にいるかもしれない猫の姿を捜して、咲がチョロチョロと動き回るのを入口に留まって眺めていた朔は、はっと息を呑んだ。
部屋の中はきちんと清掃されてはいるが、家具には埃よけか日焼け止めのためであろう白布がかけられている。どうやら使われていない部屋らしい。
それなのに、窓には鎧戸もおりていない上、カーテンまで開け放されているのだ。
その違和感を察知した朔は、扉の取っ手をつかんだまま、じっと目を凝らして部屋の中を観察しだす。
猫ではない、何かを捜すために……。
その様子に、咲が気付いた。
「朔ちゃん、まさか何か居るのっ?」
びくっとして踵を返すと、朔の傍まですっ飛んで来る。
「こんなに明るいのに?!」
そう叫ぶ咲を心配させまいとして、朔は笑顔を浮かべた。
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