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寝転がってどれくらい経ったんだろう。
眠くはないので寝ていないが、ぼーっとしていると時間がどれくらい経ったのかすらわからなくなってくる。
することもなく、ベッドでただただぼーっとする時間。最近の日課になってきたこの時間は、案外心地良い。
だが、そんな時間も終わりを迎えた。
「入るぞ」
ノックもせずに部屋に入ってくる親父。毎度のことだからもう驚かない。
俺は上半身だけを 起こし、ベッドの上に胡座をかく。
「何か用?」
「客だ」
客? 俺の知り合いといったらガンショップの関係者と情報屋くらいしかいない。その人たちはこの場所を知らないはずだ。
「やあ、久しぶり」
柔らかい声と共に部屋に入ってきたのは、少し長めの銀髪を後ろに流すように逆立て、温かみのある双眸の内に紅の瞳を宿す男だった。年の頃は二十代後半にも見えるが、三十代にも見える。服装は、ワイシャツの上に褐色のコートを羽織っている。
ただ、こんな人と会った記憶なんてない。
「どこかで会いましたっけ?」
「……まあ、覚えてたら逆に恐いか」
男は苦笑し、椅子をベッドに近づけ腰掛けた。
親父も居間から持ってきた丸椅子に腰掛ける。
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