206人が本棚に入れています
本棚に追加
五感の内のひとつ、見るということを封じ聴覚を研ぎ澄ますために、俺は静かに目を閉じた。
ここは名前もつかないほど小さな森の中の開けた広場だ。俺の住む家もこの森にある。そして今は狩りの最中だ。
今日の獲物は、魔獣ヘルハウンドが数匹。
ヘルハウンドは知能の高い、黒き狼だ。その身体は子牛ほどもあり、狡猾かつ獰猛。まあ、そこまで強い相手ではない。
気配から察するに数は四匹。うまい具合に俺を囲んでいる。
俺は聴覚を研ぎ澄ましたまま、漆黒のロングコートの内側に隠れたホルスターに収めてある二挺の銃に手を掛けた。
ヘルハウンドが動いたのはそれから数瞬後のことだった。
枝を踏み締める音が聞こえると同時に、俺は目を開き二挺の大型自動式拳銃――黒き銃身に銀のラインが入った《アザゼル》を引き抜き、右手の銃で左手から迫るヘルハウンドへ、左手の銃で右手から迫るヘルハウンドに発砲した。
乾いた銃声ののち、銃弾は螺旋を描きながら突き進み、ほぼ二匹同時に額を貫いた。
二匹のヘルハウンドの顔面が破壊され、断末魔の叫びもなく絶命する。
残りは前後から迫る奴らだ。
俺は横へは逃げずに、前方から迫るヘルハウンドへと肉薄した。
ヘルハウンドとの距離が限りなく零距離に近くなった時、俺は地を蹴りそいつの顔面へと跳んだ。そしてそのまま顔面を踏み台にし、後ろへと宙返りをしながら跳ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!