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だが、《ベリアル》を構えた俺と対峙した時点で、逃げるという選択肢は消えたも同然だ。
《ベリアル》は火力、命中精度共にトップクラスの銃。狙いをつけた時点で下級の魔獣に逃れる術はない。
怯えにも聞こえるヘルハウンドの唸り。その唸りが唐突に途切れた時、そいつは踏ん切りがついたのか、それともやけくそになったのか、たった一匹で俺に飛び掛かってきた。
低く怒号のような咆哮をあげる《ベリアル》。その咆哮の反動は大きく、構えていた右手は頭上から後方へと孤を描いて弾かれた。
だが、それがもたらした効果は絶大だ。弾はヘルハウンドの胸部へと食らいつき、それの体内で破裂する。破裂した幾多もの小さな弾は、すべてが背を突き抜け、思い思いの方向へと姿を消した。
盛大に血飛沫をあげて吹っ飛んだヘルハウンドは、木の幹に打ち付けられ息絶えている。
「まあ、ざっとこんなもんかな」
誰がいるわけでもないのに、俺はそう呟いてから《ベリアル》を背にもどした。
取り敢えず一段落したことだし、ここらへんで自己紹介をしておこう。
俺の名前はレイン・フォード。
あまり手入れしないためにボサボサになった灰色の髪に、ありきたりな碧瞳の男だ。
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