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「ち、ちょっと銃のメンテナンスしてくる」
「……ふん」
そそくさと倉庫を出ようとする俺に、親父は小さく鼻を鳴らし、ヘルハウンドの解体に取り掛かった。
倉庫を出ると居間がある。小さな丸椅子がみっつに、木製のテーブルがひとつ。居間の隅には食器棚と暖炉があり、必要最低限なもの以外は居間にない。この居間から、親父の部屋、俺の部屋、倉庫、外へと繋がっている。
俺は足早に自室の扉へ歩み寄り、扉を開いた。
俺の部屋は、窓の近くに机と椅子のセットがひとつと、簡素なベッドがひとつ。部屋の隅には銃のメンテナンスや改造に使っている工具が散乱している。壁に掛けてある自慢の銃たちは、いずれも窓からさす陽光に輝いていた。
俺はそんな銃たちを一瞥してから、ベッドに身を投げ出し俯せに寝転がった。
銃のメンテナンスというのは嘘だ。今日の朝にすべて終わらせている。
寝返りを打ち、天井を仰ぐ。
そこには、《ベリアル》がつけた傷痕がくっきりと残っている。上からビニールシートを被せているから雨漏りはないが、さすがに目立つ。
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