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【さーて、そんじゃあベスト3に入るぞ!まずは第3位!】
一郎がそう言うとドラムロールがより一層長く鳴り響き、体育館内を複数のスポットライトがランダムに動き回り、やがて1人の男にスポットライトが集まった。
【第3位!田中祐太郎!69票!】
一郎の発表の後、体育館はしばらく静まり返った。
「……おい、誰だよ田中って」
「ほらあれだよ、2組の影の薄い奴」
「いやいやいや、アイツが3位とかありえなくね?」
周りからそんな会話が飛び交う中で、田中は未だに自分が3位だという事実が信じられないでいた。
【ほら田中!せっかくだからステージに上がって何か一言言えよ!】
「はっ、はい!」
田中はそう言って、小走りでステージに上がった。
「あっ、あの、僕が本当に3位なんですか?」
【あぁ。同情票が多かったのは否めないが、確かにお前が3位だよ】
一郎が少し嫉妬したようにそう言うと、田中はようやく笑顔を見せた。
【ほら、さっさと何か言えって】
「はっ、はい!」
そう言って田中は一郎からマイクを受け取ると、ステージの上から皆に向き合った。
《あぁ……皆が僕に注目してる!この影の薄い僕に注目してる!夢みたいだ!何かいい事を言わないと!ここで皆の心に響く事を言って、今までの影の薄い人生を変えるんだ!》
田中はそう思い、冷や汗を尋常じゃない程ダラダラと流して考えを巡らせた。
その時、
ギュルルルルルゥゥ………
「はうぅ!!」
腹の虫のような音が鳴り、田中は声を上げながら尻を押さえた。
どうやら、極度の緊張で腹痛を起こしてしまったようだ。
「どうした田中ー?」
【すっ、すいません一郎先生………トイレに……トイレに行きたいですー!!!】
迫り来る腹の痛みから、田中は思わずマイク越しにそう叫んでしまった。
後で自分の過ちに気づいたが時既に遅し。田中は顔を赤らめながらそそくさとトイレに向かっていった。
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