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それにしても、本当にぐっすり眠っている。
「…おーぃ、んなとこで寝てっと喰われるぞぉ?」
すやすやと眠りこけている青年へと声を掛けてみる。
……起きない。
というか反応すらしない。
「おぃってば…」
小さく苛立ち、眉を寄せて顔を覗き込む。
木々に遮られてまだらに射し込む月光に反射して、青年の左耳のピアスが輝いた。
「…ぅげっ」
更に眉を寄せて後ろへ飛び退いた。
彼の左耳にも、眠りこけている青年と同じピアス。
…族長候補の装飾品だ。
頭をガリガリと乱暴に掻き回し、どうしようかと考える。
陽族と夜族が出会う事自体珍しいのだ。
しかも族長候補ときた。
下手に手出し出来ない上に放っておくのもまずいだろう。
「うー…」
思わず唸る。
面倒臭い。
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