始まり

4/12
前へ
/280ページ
次へ
  それにしても、本当にぐっすり眠っている。 「…おーぃ、んなとこで寝てっと喰われるぞぉ?」 すやすやと眠りこけている青年へと声を掛けてみる。     ……起きない。 というか反応すらしない。 「おぃってば…」 小さく苛立ち、眉を寄せて顔を覗き込む。 木々に遮られてまだらに射し込む月光に反射して、青年の左耳のピアスが輝いた。 「…ぅげっ」 更に眉を寄せて後ろへ飛び退いた。 彼の左耳にも、眠りこけている青年と同じピアス。 …族長候補の装飾品だ。   頭をガリガリと乱暴に掻き回し、どうしようかと考える。   陽族と夜族が出会う事自体珍しいのだ。 しかも族長候補ときた。 下手に手出し出来ない上に放っておくのもまずいだろう。 「うー…」 思わず唸る。 面倒臭い。  
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

888人が本棚に入れています
本棚に追加