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「これね、僕の部族の一押し商品なんだ」
嬉しそうに言い、小瓶の蓋を開ける。
「他の部族にしか効かない、痺れ薬みたいなやつ」
くんくんと鼻を鳴らして匂いをかぐと、大きく息を吐き出した。
「こんなにいい匂いなのに、何で痺れるんだろうね?」
「知るかそんなんっ!」
のんびりと小さく首を傾げた青年に苛立ち、噛みつくような勢いで吠える。
だが思うように頭が働かずに、ただ苛立ちだけが募っていく。
寄りかかっていた大樹から身を起こし、青年はまた笑顔を浮かべた。
「僕、蝶族のキチェ。…君は?」
「……、…」
「……もっとこれ、かいでみる?」
「…っ、イェンだ!…狼族の」
半ば脅しのように尋ねられ、たまらず答えた。
言うつもりはなかったのに…。
そう思い唸る。
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