始まり

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  唸るイェンを横目に、キチェは大きな欠伸をしている。 …かなりマイペースのようだ。   眠そうにしきりに目を擦り、再び大樹へともたれる。 「…イェンは眠くないの?」 「バカかお前はっ!俺は夜族だぞっ!」 「あ、そっか」 じゃあ眠くないか、と呟き、キチェはまた巾着を探り始めた。 「えーと…」 いくつもの小瓶がぶつかっているのだろう。 小さな高い音が響く。 「…」 今度は何だ…? 一抹の不安を感じ、イェンはキチェを見つめる。   「あった」 「……何が」 巾着からようやく探し当てた小瓶を取り出し、イェンの目の前に突き出した。 小瓶には黄色の粉末が入っている。 「…んだよ、これ」 なんとなく答えが想像出来たが敢えて訊いてみた。 「へへっ」 嬉しそうに笑うキチェの顔に、やっぱりかと肩が落ちた。 蓋を開けようと指を掛け、思いついたようにイェンを見遣る。 「うーん……無理っぽい」 「…何がだ」 「イェンを運ぶのが」 「…」  
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