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向かったのは筆頭家老赤尾清綱の居館であった。
「爺、入るぞ。」
赤尾清綱の書斎。
清綱は考えごとをしていたようだった。
そして意外な小さい訪問者に少し驚いた。
「これは猿夜叉丸様。今日はどうされました?」
「爺の顔が無性に見たくなったのだ。」
可愛い子供の言葉…こんな子供を人質にやるなんて余りに不憫だ…
そう清綱は思い、自然と表情に無念さが浮かび上がってきた。
それを察知した長政は聞いた。
「爺、いま何を考えておったのだ?」
「もちろん先の六角家の申し出についてです。我が浅井家は六角の臣下ではないのです。それなのに義賢め…図に乗りよって。よりによって猿夜叉丸様を人質に要求するとは。。」
「爺は私が人質に行くのは反対なのか?」
「勿論です。猿夜叉丸様は浅井家の次期当主なのですぞ。そのようなお方を義賢の元へなどやれません。」
清綱の気持ちはいたいほど分かった。
でも、戦国時代で人質は致し方ないもの。
長政はこの小谷の地を自分が行けば守れるということは分かっていた。
…次期当主は僕だ。僕が小谷を守らなくてはならないのだ。
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