君の傍で

猿夜叉丸

「爺、私は人質に喜んで参る気だ。
まず、私が人質に行かなければ私の大好きな小谷が六角に攻められ荒れてしまう。それに今の浅井家ではとうてい六角の攻撃に耐えれないだろう。
私が人質に行けば戦火が小谷に及ぶことはないだろう。」

清綱は感動した。
目の前にいるわずか８歳の子供がこんなに小谷のことを考えている。
清綱も正直六角の攻撃に耐える自信がなかったから悩んでいた。

でも自分が小谷を守る。小さい背中に浅井家の運命を背負う猿夜叉丸の姿に清綱は感動した。

「だから清綱は他の者を説得しておいてくれ。特に直経を説得するのは一苦労だろうが、そこは爺の力で何とかしてくれ。」

「ははっ。爺にお任せください」

先ほどまでの悩みは一瞬で吹き飛び、目の前の少年……猿夜叉丸に大名としての確かな素質をみた。

この人なら浅井家を…
と清綱はふと思った。