510人が本棚に入れています
本棚に追加
満霞と共に過ごした人々は人生を全うし、今はその子供や孫が過ごしている世界。
それを毎日見ている満霞の目にはもう涙はない。
人間界に比べて龍神界は年月がゆっくりと流れている。
いや、年月は変わらないのだ。
人間界の一日も、龍神界の一日も同じ時間に始まり、同じ時間に終わる。
ただ、人間に比べて成長の遅い龍神たちは人間の何百倍、あるいは何千倍と生きる。
16~7歳にしか見えない儷も年に換算すると、もう2000年ほど生きているという。
「何か私に用があったのではないの?」
昔を思い出していた儷は満霞の声で我に帰った。
「あぁ、そうだった。父上からお呼び出しだ。満霞も来い。」
「わかったわ」
水辺から立ち上がり、着ている着物から草を払い落とす。
最初のコメントを投稿しよう!