プロローグ

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満霞と共に過ごした人々は人生を全うし、今はその子供や孫が過ごしている世界。 それを毎日見ている満霞の目にはもう涙はない。 人間界に比べて龍神界は年月がゆっくりと流れている。 いや、年月は変わらないのだ。 人間界の一日も、龍神界の一日も同じ時間に始まり、同じ時間に終わる。 ただ、人間に比べて成長の遅い龍神たちは人間の何百倍、あるいは何千倍と生きる。 16~7歳にしか見えない儷も年に換算すると、もう2000年ほど生きているという。 「何か私に用があったのではないの?」 昔を思い出していた儷は満霞の声で我に帰った。 「あぁ、そうだった。父上からお呼び出しだ。満霞も来い。」 「わかったわ」 水辺から立ち上がり、着ている着物から草を払い落とす。
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