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「あんま良い噂は回ってこねぇよな…」
土方は、次に舞桜から発せられる言葉は否定の言葉だと思った。
初対面の相手には、嘘でもそんなことないと言うだろう。
「そうどすなぁ…京の治安を護るゆうてはるけど、うちらからしたら壬生浪(ミブロ)の方がよっぽど怖いわ…」
土方の思いは裏切られた。
呆気に取られ、口の閉まらない土方。
この遊女はいったい何なんだ?
客相手にそんな本音は普通、言わねぇだろう。
「何か間違った事言いました…?」
土方の視線が痛くなり、聞いてみた。
「…いや……お前みたいな女、初めて会った…」
「そんな口説かれても、うちが惚れた男はんやないとあきまへんえ…?」
こんなにものをはっきり言う女は珍しい。
ましてや遊女は客を取るために、嘘でもお世辞を言うだろう。
この女……気に入った…
いつも想いを寄せられてばかりの土方。
自分に全く興味のない女は新鮮だったのだ。
「また来る。」
土方はそう言い残し、帰って行った。
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