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「幸村ぁ~‥」
「か、兼続さま‥?」
近頃、兼続の様子がおかしい
政務から戻ってきたと思えば、情けない声を出して、自分に泣きついて
仕事場で辛い事でもあるのだろうか
幸村は不安げに兼続の背中を慰めるかのように摩ってあげた
幸村がこの春日山城に人質と言う名目で預けられてから、兄代わりとして兼続はよく世話をしてくれた
最初は辛い事もあったが、その時はいつでも兼続が傍にいてくれて
兼続には感謝してもしきれない程
だからこそ、自分に出来る事があれば、兼続にしてあげたいと思う
「兼続さま‥この幸村に出来る事があれば、何でもお申しつけ下さい」
兼続さまのお役に立ちたいのです
そんな幸村の言葉に、兼続は驚いていたが、やがて嬉しそうにほほ笑みながら頭を撫でてやって
「ありがとう幸村。でも大丈夫だよ。私はお前のその気持ちだけで嬉しいから」
気持ちは本当に嬉しかった
だけど、まさか言えるワケがない
最近入ってきた、謙信に使える忍びにイジメられてるだなんて
いや、イジメと言うには大袈裟な表現だが、気持ち的にはそんな感じだった
廊下などでバッタリ会ってしまえば、ジッと穴が開く程睨まれて
始めは睨みつけてきただけで済んでいたが、最近は自分に向かってクナイまでが飛んでくるようになって
理由もわからずに、その内本当に殺されるのではないかと言う恐怖や、警戒やらで、近頃は何をしても失敗ばかり
尊敬する謙信には、
『憑かれてるのではないですか?』
冗談混じりにそんな事を言われる始末。
「謙信公の為‥に、も‥忍びなんぞに…負け…る、か…」
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