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忍びが入ってきてからと言うもの、ゆっくり眠っていなかった気がする
隙を見せたら殺される
そんな恐怖から、最近は眠る事すら出来なくて
だけど、幸村の体温を感じて、なぜだか一気に睡魔が襲ってきた
身体的にも、精神的にもかなり疲労していたらしく、眠るワケにはいかないと言う抵抗も空しく、兼続は幸村を抱きしめたまま眠ってしまったのだった
「――謙信公‥か」
兼続にとって、謙信は大切な人
こんなにも慕われるなんて、やはり謙信は凄いんだ
そう、思ったのと同時に、果たして自分は兼続にどう思われているのかなと、不安にもなった
弟みたいな存在?
手のかかる、世話の焼ける唯の子供?
そんなの嫌だ。
少しでも、兼続に認めて貰いたくて、兼続を自分の寝床に寝かせた後、幸村は一人で部屋から飛び出した
兼続は意識がオチる前、忍びと言っていた
兼続をあそこまで疲れさせているのが忍びなのかどうかはわからないが、行くしかないと
幸村は直感的に思えた
しかし、行くと言っても相手は忍び
人質風情の自分が会えるハズもなく
──と、その時。
「何をしているの?」
考えを張り巡らせながら廊下をトボトボ歩いていると、背後から声をかけられて
幾ら考え事をしていたとは言え、突然何の気配もなしに声をかけられては驚かないはずがなく
大きく肩を震わせ、振り向けばそこには、金の髪の色をした女性がいて
「──あ、の‥」
「初めて見るコ‥この城にいるって言う事は部外者じゃない‥わよね‥」
ここに来てから数年経ち、この城にいるほとんどの人と面識があった幸村も、初めてみる顔で
と、言うより、彼女のような髪の色の者ならば、一度みただけで忘れはしないだろう
「あ‥私は…」
「かすが。その方が以前話した幸村殿ですよ」
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