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このガネーシャの像は、クーポンを提示するとオクラのトッピングがつくスープカレー屋に入った時の主人が、「倶知安町に住む木彫り職人の父親に彫ってもらった作品だ」とか話し出して、「鋳造の間違いじゃないのかっ」という疑問を俺は抱いた。初対面だったので気に障る質問はしてはいけないと思い話しを合わせてその場をしのいでいたのだが、「アンタ話しがわかるねっ」とかなんとか、なにも全くわかってもいないのだが、一方的に気に入られ、このガネーシャの像を持ち帰るはめになったのである。
そこのスープカレー屋のカウンター席には、一カ所穴があいた席がある。
近々、ガネーシャを返しにいくつもりだ。
俺のデスクのとなりには、4つ年上の女性がいる。力道さんだ。
力道さんは、俺が入社1年8ヶ月目に別の商社から引き抜かれてきた若くして才能ある先輩だ。
力道さんは俺に好意を持っている。2度告白されている。俺は2度の告白を断っている。そのたびに力道さんは、
「アタシあきらめないからねっ」
と、笑顔で言葉を返してくる。もしかしたら笑顔の後に、一人涙を流しているのかもしれない。気持ちをふさぎ込んでいるのかもしれない。一人の女性に2度も気持ちをぶつけてもらえるのはありがたいことだ。俺は、今まで人に告白されたことがない。ばあちゃんくらいだ。膝の上で「好きよぉ、好きよぉ…」と。俺は、そんなのカウントに入れない。力道さんが初めてだ。
力道さんは、長身でスタイルが良く、制服から胸がこぼれでそう。肩甲骨の下の出っ張りまで髪が伸び、直毛で黒髪。前髪は、眉のあたりて一直線にカットされている。とても美人の先輩だ。
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