‡プロローグ‡

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大学へは進学せずに、製菓の専門学校へ行きたいと言った時、母は私の前で静かに泣いた。 母の頬を伝ってこぼれ落ちる涙は、それまで見たどんなおもちゃよりも綺麗な色をしていた。 部屋に射し込む夕暮れの光が反射して、キラキラといくつもの光を生み出していた。 けれど、私はそのとても高価な輝きがずっと怖かった。 母の涙を見たのは後にも先にもその一度きりだ。
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