2・青い目の移すもの

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……いや、そんなこと聞かれても……。 ていうか、まさか記憶喪失? いや、でも「いつも」って言ってたし。 ちょっと待った。 落ち着いて考えよう。 つまり、どういうことなんだ? もはや、何から聞いたらいいのかわからない。 少し、考える時間がほしい! と勝手なことを思いながら、どうにかこうにか心を落ち着かせようと必死に口を開く。 「えっと……」 しかし、次の言葉が出てこない。 記憶喪失ですか、と聞くわけにもいかないし、まして、大丈夫ですか、などと聞けない。 そんな身もふたもない質問しか浮かんでこない自分の頭に、俺は限界を感じた。 すると、彼女の方から助け舟を出してきた。実際には彼女は助け舟を出したつもりはないのだろうが、俺には一息つくきっかけになった。 「あ、ごめんね~。こんなこと突然言われてもこまるよね~?」 彼女はケラケラと笑っている。そんな笑いながら話す内容なのか、これは。自問しながらも、次の彼女の言葉を受け入れる。 「なんかね、私もしかして死んじゃってんのかな、とかって思うんだ~。あ、全然わかんないんだけど、だって何にも覚えてないんだもん。なんていうか、カン?」 「は、はあ……」 だめだ、ついてけない……。 俺の口からは、もはやそんな気のない返事しか出てこない。
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