2・青い目の移すもの

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実際、まだ肌寒い初春の、こんな時間に真夏の装いで微笑む女性に『私死んじゃってるっぽい』とか言われて、『そうなんですか大変ですね』などと答えられる方がどうかしているのじゃないかと、こっそり考えてしまう。 俺、疲れてるのかな……。 仕事しすぎたか……? なんだか、どっと疲れを感じた俺に彼女は笑いかけた。そして、どこか寂しそうな顔で、「私もよくわからないのよ」とつぶやいた。 そっと、彼女は大きな桜の木を見上げている。 「気がつくと、いつも、ここに、こうしているの」 ここ、とはこの桜の木をさすのだろう。この桜の木の下に、わけもわからずいつのまにか彼女は立っている……しかも、いつも。 そう言うのだ、この子は。 そんなことが実際にあるのだろうか。 いやいや! あるわけない。 警察に連れていったほうがいいのか……いや病院? そんなことを考えながらとりあえず口を開く。 「えっと……どのくらい前からこういうことになってるの?」 その声に彼女は視線を彼に戻す。 「ん~、結構前」 「結構……?」 その漠然とした答えに、やはり返す言葉をなくした俺に、彼女は笑顔で続けた。     「でも、ここで誰かに会ったのは、お兄さんが初めてだよ」     
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