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「ねぇってば~!」
「……はい?」
「その子、それ以上こっちに来てくれないんだけど、こっちに連れてきてくれない?」
俺は彼女から2メートルほど離れたところに、ちょこんと座り込んだ白い子猫を見た。子猫はフニフニと尻尾を動かしながら、彼女を見上げている。
俺の視線を感じ取ったのだろうか、子猫はこちらを振り返った。
俺は堤防を降りて、猫にゆっくり近づいた。青い瞳がこちらをじっと見つめ返している。
逃げる気配はなさそうだ。
「おまえ、あの子と知り合いか? 呼んでるぞ」
なんとなく猫に話かけてしまった。
子猫は静かに俺を見つめ返した。そして、すっと俺から視線をそらし、足音も立てずに彼女の方へ歩きだした。
「って……おい、今の言葉理解したのかよ!」
思わずつっこみながら、猫を目で追った。その猫の姿を見て、彼女はしゃがみこんで「きゃ~おいでおいで~!」とはしゃいでいる。
なんとなく俺もその猫の後をついて歩いた。
「君の猫……のわけないか」
「え? お兄さんの猫じゃないの? 今一緒に来たじゃない」
彼女は満面の笑みで子猫を抱き上げた。
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