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俺は、そんな言葉が野分の口から出てくるとは思ってなかった。
だから驚いた。
いや、驚いた、という言葉では表現できないほど、驚愕だった。
野分は普段、自分の内面を語ったりするやつじゃない。
だから俺は野分の口から出てくる俺への思いに、とても強く…重いものを感じた。
「昔から、ずっとヒロさんが好きでした。」
「…む、昔って…」
「幼い時に…ヒロさん、習い事が嫌で泣きじゃくりながら俺の家に逃げ出してきて…
その時…一目惚れしたんです。
俺の前でしか泣かないって言ってくれて、凄く嬉しかった」
「……」
体中の熱が、顔に一気に集まってきた。
きっと今、俺の顔は赤いんだろう。
野分の唇の動きは止まらなかった。
いつものように重い口を切っては、ぽつりぽつりと自分の心を打ち明けていった。
俺は苦しくてたまらなかった。
その苦しさがなんなのか、自分ではわからない。
でも、なにかが俺を締め付けた。
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