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『はじめまして、え~本日はですねぇ、あの事についてお話しなんかどうかなぁ~なんて思ったりしてですね…』
ツー、ツー、ツー、
!切りやがった!慌てて清美の方を見る貴史…
-数分待って、掛け直してくるから-
至って冷静な清美を見て、感心していると、すぐに電話が鳴りだした。
『もしもし』
『ふざけてるのか?』
ごもっともです。だって清美がおちょくる位がいいって言ったから…などと考えていると、渡辺から話しを切り出して来た。
『何の用だ?』
向こうも薄々気付いているだろうがこちらから言わせたいらしい。
『あなた方が欲しがっているのは鍵だと思います。どこかの貸し金庫の鍵だと思いますが、俺達は何があるのかは知りません。』
貴史は金庫の中は見ていないという所を強調して、渡辺の反応を伺う。
『ではその鍵が私の欲しがっている物かどうかわからないという事だな…』
『まあ、そうなりますね。なんなら確認してみましょうか?』
貴史は主導権を握る為、わざと上から口調で言ってみた。
暫く沈黙が流れ、渡辺はゆっくりと貴史に問い掛けた。
『要求はなんだ?』
ここからが本番だ…貴史の額に汗が滲む…清美はそっと貴史の汗を拭き取り、手を握りしめた。
『まず、こちらの身の安全を保証して欲しい。俺達は別に金庫の中にもあんた達にも興味は無い。いきなり尾行されたり誘拐されそうになったりして迷惑しているだけだ。』
すると渡辺はあっさりとその要求を飲んだ。
『わかった。今後、君達には一切関わらない事を約束する。これで交渉成立だな。』
あまりにも上手く行き過ぎて貴史は逆に不安になった…
『しかしそう言って油断させといてって事も考えられる…』
言葉に詰まる貴史に渡辺は一言言った…
『では、証拠を見せよう。それで安心出来たら取引してくれ。』
そう言って渡辺は受話器を置くと、すぐに別の所に電話を掛けた…
『ふふ…これで一安心だな』
渡辺の不気味な笑みが社長室に響いた…
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