夕暮れ時と壊れる認識。

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ここが、その交差点。 紫帆は何とも思っていないようだ。 何故――? あの時の交差点。 あの時と同じようなトラック。 紫帆は、何も思い出さないのだろうか? 目の前は赤信号。 二人並んで立ち止まる。 ――なんだろう。この違和感。 病院で感じた時の違和感に―――! …そうか。そういうことか。 何故、ぼくは病院にいたのか。 何故、紫帆の叫びはぼくにしか聞こえなかったのか。 何故、ぼくに体の痛みがないのか。 そして、何より。 何故、 さっきから足音が聞こえないのか―― …! 甦る過去の断片。 夕暮れ時。 交差点。 青信号。 横断。 トラック。 紫帆。 守れ。 守れ。 守れ。 衝撃。 赤。 紅。 緋。 …そうだ。 ぼくは。 死んだのは、ぼくだ。
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