ラブレター

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 いつもの様に今日も朝から登山だ。  俺は山の高台にある私立高校に通っている。この春二年に上がったばかりだ。  今日は席がえだったな。    教師の自己紹介の様な授業が6限も続きHRを迎えた。  予告通り席がえだ。番号の書いてある紙を順番に引いていき、俺は窓際の一番後ろの席をゲットした。なかなかのくじ運だ。今学期は授業が受け易そうだ。そう思いながら荷物をまとめ、いつものように下山した。  そして次の日。昨日まで座っていた席に間違えて座ってしまうというお約束的ギャグをかましてから現座席に着くと、机の中に何やら入っていた。薄っぺらな紙切れが一枚出てきた。ここに座ってたやつの忘れ物かとも思ったが誰が座っていたのか見当も付かない。名前すら分からないやつがゴロゴロしている。まぁいいかとその紙切れを裏返してみると可愛らしい文字で 『これからよろしくね。』 と書いてあった。  おっ、ついに俺の時代が来たか。これはこのクラスの女子に違いない。しかもこの書き方では、一年の時は違うクラスだったということで間違いないだろう。まさしく春の到来だ。今日を『立春』と名付けよう。  それからもその『紙切れ』はちょくちょく机の中に入れられていた。ある時は、 『昨日の数学難しかったね。』  そしてまたある時は、 『最近暑いよね。背中汗にじんでるよ。』etc…。  もうそろそろ誰か分かってもいい頃じゃないかと思い始めた4月最終日。ちょっといつもと違った。 『今日でお別れだね。さみしいな。もっとあなたを見ていたかった。』  どういうことだ。転校するのか?いや、先生はそんなこと何も言ってなかったぞ。  俺の席の真後ろに貼ってあるカレンダーをふと見た。確かに今日で4月が終わることを確認して目を少し上にやると、リボンをつけたミニチュアダックスフンドがこっちを見てウインクをした。ように見えた。
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