信じてほしいなら、

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 さっきの苛々の余韻で、なんか睨みつけるようにやたら可愛らしい商品名を言ったあたしに、店員はやや引き気味で、かしこまりましたと笑いかける。  お金を払って、出来上がるまでカウンターを少し移動して待つ。  しばらくすると、カップを乗せたトレイを店員が差し出してきて、にっこり。どうも、と愛想なく受け取ってから、店の奥にあった2人席に向かった。  どすっと椅子に腰を下ろして、テーブルにトレイを置く。  そのあと、肩に掛けていた鞄を向かい側の椅子に乱暴に置いた。宿題をしようと思って来たわけだけど、すぐにやる気は起きない。冷たいカップを持って、スプーンで上にこんもりと居座っている生クリームを掬って口に入れる。あまっ。  ストレス解消だと言わんばかりに、もくもくと甘い太る素を体に入れていった。  ああ、これで太ったら南のせいだ。呪ってやる。声かける女全員に張り手をくらわされる呪いをかけてやる。それで、誰にも相手にされなくなればいいんだ。ざまーみろ。  3分の1と少し食べ終えて、ちょっと満足。唇についたクリームを中指で拭って、ぺろりと舐める。あの母がいたら、また行儀が悪いって言われそうだけど、ひとりだから気にしない。  持っていたカップをトレイの上に置いて、満足げに息をついてから、向かい側の椅子に置いていた鞄に手を伸ばした。  さー、もうあのバカ男のことは忘れた忘れた!チョコレートモカフラペチーノと一緒に飲み込んだ!  そうやって気合いを入れて、一番得意な英語から終わらせようと、プリントとペンケースを取り出そうとしたとき、横から声を掛けられた。 「ねえ、ちょっと」  高い声、女の声。
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