信じてほしいなら、

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 一瞬、麻美か梨佳かと思ったけどあの2人がこんな不機嫌そうな声で声を掛けてくるはずがない。  特に麻美なんて、さーえー!と甘えた声で駆け寄ってくるはずだし。  聞き慣れない声に顔を上げて、視線を声がした方に向けると、そこには同い年ぐらいの女が4人立っていた。1人を先頭にその後ろにあとの3人が控えているって感じ。  ……で、誰? 「…………」  砂糖菓子みたいな甘ったるい女の子女の子した格好の4人組みを怪訝な顔で見上げていると、先頭にいた女が両腕を組んで、すごい不機嫌そうな顔で口を開いた。 「あんたさあ、前に南君と一緒にいた女だよね?」 「……え?」  何言ってんの、この女。  せっかく忘れていたところにまたあのバカ男の名前を出されて、イラつく。そんでもって、このわけのわかんない集団に絡まれているのもあのバカのせいかと思うと、さらに苛立ちは増す。  ていうか、前にって、何。  あのバカといるときにこの女と会ったことなんかあったっけ?と首を傾げつつ、やたら男ウケしそうな容姿をしている女を見上げていると、あ!っと何かを思い出す。  やたら不機嫌そうな声だから気付くのが遅くなったけど、そうだ、この女をあたしは見たことがある。  確か、ユウカネー、だ。  いや、そんな変な名前じゃなくって、多分「ユウカ」なんだろうけど。自分のことを話すときに「ユウカねー」って言ってたから、つい皮肉を込めて心の中でそう呼んでいた。  じわじわ思い出してきた。いつだったかはハッキリ覚えていないけど。確か、南と居たときに声をかけて、その後、このユウカネーと南は2人仲良く本屋に行ったんだっけ。  って、そんなことはどうでもいい。どうでもいい。
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