信じてほしいなら、

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 やる気なく待ち合わせ場所らしいゲーセンに向かって歩いていると、隣ではしゃいでいた麻美が携帯の画面を見せてくる。梨佳も、見てみなよー結構似てるよー、とか笑って勧めてきた。  いや、ていうかさ、岡本似って、あたし別に岡本の見た目が好きとかそういうんじゃないんだけど。  渋々、麻美の携帯を持って、画面に映る岡本似のヨッシー君とやらを見る。 「ね? 似てるでしょ? 目とかそっくりじゃない?」 「……まあ、似てるっちゃ、似てるけど……」  わくわくとあたしの顔を覗き込んでくる麻美と梨佳に苦笑い。  小さな画面に無駄に格好をつけて映っている男は確かになんとなく岡本に似ている気もしないでもないけど。  なんていうか、岡本にチャラさを足して、ちょっと頭良さそうな要素を入れて、顔面に張り手をしたって感じの顔。いや、もうその時点で岡本ではないんだけど。  っていうか……これ、髪型とか服装とかで誤魔化してるけど、結構、崩れたっていうか、うん、あんまりよろしくない顔立ちじゃない?  麻美いわく石倉が、あたしにピッタリだと紹介してきたらしい。短髪であっさりした顔立ち、明るくて面白いっていう麻美が出した条件に当てはまるって。  それを聞いた瞬間ピンときた。これは絶対、石倉の嫌がらせだって。  あたしが石倉を振ったことが気に食わなくって、こいつを出したんだと。いや、そのヨッシー君とやらには失礼なんだけど。  性格はサイアクだけど、顔だけは、まあ、いい南を見慣れていたせいか、随分ヒドイ顔に思える。  ていうか、この格好をつけた笑顔がムカつく。岡本のような、こう、くしゃっと顔をさせての満面の笑みって感じじゃなくって、似合いもしないくせにニヒルな笑いをしている感じ。お前の顔だとニヒルっていうより、アヒルだろ、と言ってやりたい。言わないけど。
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