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「あ、そうそう! 紗英、昨日の話だけどさ!」
「昨日の話? なんのこと?」
「もー、アレだって! ほら! イイ男紹介してってやつ!」
電話して来たじゃん!忘れたのー?と明るい声で言う麻美。いや、確かにしたけど昨日の今日でその話題出さなくてもいいんじゃない?麻美の言葉に昨夜の出来事が頭の中を駆け巡って、ずっしりと重い気分になった。ああ、やな事思い出した。
麻美はそんなあたしの様子なんて気に留めず、ぺらぺらと口を動かす。この子のあっけらかんとして能天気なところはキライじゃないけど、たまに空気を読めと苛立つことがある。いや、あたしのことを思ってのことだとはわかってるんだけどさ。
「昨日の明治の子、せっかく紗英のために来てもらったのに会わなかったでしょ? 残念がってたよー? って、ことで今日の放課後空いてるよね?」
「今日? そんな急に……別に、空いてるけど……そういう気分じゃないし」
「そういう気分じゃないって、紗英はいつもそう言ってんじゃん! こういうのはね! 思い立ったが吉日なの!」
行こ!ね!ハイ!決まり!なんて強引に決めた麻美は、満足げな表情を浮かべて、サンドイッチを齧りながら右手に持っている携帯を打ち始める。その様子に眉を顰めているあたし。麻美の向かい側に座っている梨佳は麻美の強引さに苦笑いを浮かべながら、紙パックのジュースにストローを刺した。携帯を打っている麻美を横目に2人が昨日会っていたらしい明治学園の男のことを梨佳に尋ねる。
「……昨日のヤツってどうなの?」
「どうって……そうだねえ。あたしは悪くないと思うよ? 途中で帰っちゃったけど、ノリもよかったし。顔は藤嶋くんみたいな華やかなイケメンって感じの顔立ちじゃないけど、結構格好よかったよ」
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