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「おわっ、ち、ちょっと長門?」
彼の大きな背中。
暖かい、彼の匂い。
彼の匂いに包まれて、私は平静を取り戻す。
現在の状況を把握し、私は慌てて彼から離れた。
「ど、どうしたんだ長門」
エラー、それも重大な。
私は彼に接近しすぎることを許可されていない。
致命的ともいえるエラー。
「なんでもない。ちょっとしたエラー。迷惑をかけた」
彼は私のことを変な女だと思うだろう。
私はいったい、何をやっていたのだろう。
彼の大きな手が、私の頭にぽんと置かれる。
「長門、怖い夢でも見たのか?」
彼のゆっくりとした、優しい言葉。
その言葉に私はこくんと頷く。
「そんなときは、甘えていいんだぞ。誰だって急に不安になるときだってあるしな。なんつーか、今のお前、元気のないときのうちの妹みたいで見てると落ち着かないんだ」
彼の言葉に頷き、その胸に頭を埋める。
彼の匂い、彼の体温。
トクン、トクンとなる鼓動。
ただの脈拍の音なのに、どうしてここまで私の心を安らかにしてくれるのだろう。
彼の手が優しく私の頭を撫でる。
彼の手が、気持ちいい。
どれだけそうしていたのだろうか。
心が静まった私は彼から離れる。
「・・・・・・ありがとう」
言うべき言葉は他にあるだろうに、エラーで埋め尽くされた頭はその言葉を紡ぐだけで精一杯だった。
彼は何を言おうか戸惑うように視線を迷わせ、私の手を掴んだ。
「鍵返してから、飯でも食べに行くか」
彼の言葉に私はまた頷いた。
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