第五章・―過去―

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 目の前にいる山口も、詳細は知らないのだろう。  だから簡単に憧れる。  だからといってそれが悪いという訳ではない。山口は明の過去を知らないのだから、咎められる筈もないのだ。  渡された資料を握りしめ、今回の事件について、望の冤罪について明はどう思っているのだろうと深く息を吐く。 「……高村警視?」  黙っていると、心配そうな表情を浮かべた山口が覗き込んできた。 「……山口君。君は警察を辞めて、それからどうするつもりだね」  話の途中ですっかり感傷に浸ってしまったと、申し訳なく思いながら今後の身の振りようを聞いてみる。  すると、ばつが悪そうに視線を逸らした山口が答えた。 「……しばらくは、職には就かずゆっくりと過ごせるならと思っています。医者からも、そうするように言われています」  言葉じりから、山口は心療内科などに通っているように伺える。  余程精神がまいっているのだろうかと、束の間考えてから続けた。
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